業務時間外の酒気帯び運転を理由に解雇されたセールスドライバーが、運送会社に対して退職金の支払いを求めた事案です。

これは、ヤマト運輸事件(東京地裁 平19.8.27)(労判ダ945号92頁)というもので、概要は以下のとおりです。

 

大手運送会社のY社のセールスドライバーであったAは,業務終了後、飲酒して自家用車を運転中、酒気帯び運転で検挙(免停30日、ただし講習受講により 1日に短縮、罰金20万円)されました。

Y社は、Aが検挙されたこと、およびこの事実をY社に隠していたことを理由に、Aを懲戒解雇しました。
Y社の就業規則では、「業務の内外を問わず飲酒運転及び酒気帯び運転をしたときは懲戒解雇する」と規定されており、退職金支給規程には、「懲戒解雇の
場合は退職金を支給しない。ただし、事情によりその全額または一部を支給することがある」との定めがありました。

 

このことでAは懲戒解雇の無効を理由に、Y社に対して退職金の支払いを求め、訴訟を提起したものです。

この裁判において、裁判所は、「Y社が大手の貨物自動車運送事業者であり、AがY社のセールスドライバーであることからすれば、Aは交通事故防止に努め、事故につながりやすい飲酒・酒気帯び運転等の違反行為に対して、厳正に対処すべき立場にある。このような違反行為があれば、社会から厳しい批判を受け、これが直ちにY社の社会的評価の低下に結びつき、企業の円滑な運営に支障をきたすおそれがあるので、業務の内外を問うことなく懲戒解雇という最も重い処分をもって臨むという就業規則の規定は交通事故の防止に努力するという企業姿勢を示すためにも必要なものとして肯定され得るものといえる。

そうすると、Aの上記違反行為をもって懲戒解雇とすることも、やむを得ないものとして適法とされるというべきである。」

 

また、「退職金は、賃金の後払いとしての性格を有し、企業が諸々の必要性から一方的、恣意的に退職金請求権を剥奪したりすることはできない。Aは今回の他に懲戒処分を受けた経歴はうかがわれないこと、今回の検挙も罰金刑を受けたのみで事故は起こしていないこと、反省文等から反省の様子を看て取れないわけではないことを考慮すると、Aの行為は、長年の勤続の功労を全く失わせるほどの著しい背信的な事由とはいえない。

 

したがって、就業規則の規定にかかわらず、Aは退職金請求権の一部を失わないと解される。」

 

また、「Aに支給されるべき退職金の額は、少なくともAが受給しえたはずの962万185円の約3分の1である320万円を下ることはないというべきである。なお、この金額は、労働審判において審判委員会が支払いを命じた金額より多いが、調停の成立による解決を優先とする労働審判と本件訴訟における判断とは事情を異にするというべきである。」

として、Aの懲戒解雇を有効としたうえで、Aの退職金の支払い請求を一部容認し、
所定計算額である962万185円の約3分の1である320万円の支払いを命じました。

自殺男性の労災、逆転認定。

2005年9月に自殺した食品会社の男性社員の遺族が行った労災申請について、認定を退けた名古屋南労働基準監督署の決定を愛知労働局の労災保険審査官が取り消したことが8月31日、遺族側代理人への取材で分かりました。

過剰な業務やノルマが自殺につながったとし、労災認定したのものです。

代理人によると、男性は愛知県の営業所に勤務し、自殺の数カ月前からスーパーでの試食販売など不慣れな作業を命じられ、月約75〜130時間の時間外労働が続いたものです。

自殺した月は前月より約400万円多い約1,100万円の売り上げノルマを課せられていたそうです。

男性は長野県で橋から川に飛び降り自殺し、遺族が08年7月に労働基準監督署に労災認定を求めたものでした。

労働基準監督署の労災認定に不服の場合は、本人や遺族は労働保険審査官に審査を求めることができます。

添乗員にみなし労働不適用との判決がでました。

 

阪急トラベルサポートが「事業場外みなし労働制」の適用を理由に残業代を支給しなかったとして、派遣添乗員の女性が未払い分に付加金を上乗せした計約110万円の支払いを求めた訴訟の判決で、東京地裁の鈴木拓児裁判官は11日、請求を全面的に認めました。

事業場外みなし労働制は労働基準法で定められ、会社の指揮・監督が及ばず、労働時間の算定が困難な場合に一定時間働いたとみなされる制度です。

判決理由で裁判官は「阪急トラベルサポートは、派遣添乗員にマニュアルで業務を詳細に指示してツアーを管理し、モーニングコールで遅刻を防ぐ措置なども講じており、労働時間は把握可能だ」と指摘しており、制度の適用条件を満たしていないと結論付けた模様です。

その上で「派遣添乗員には制度が適用されないとする労働基準監督署の指導にも従わず、過去の割増賃金を支払う姿勢がない」と阪急トラベルサポートを非難し、労働基準法の規定に基づき、悪質なケースに当たるとして未払い分約56万円と同額の付加金も認定しました。

判決によると、阪急トラベルサポートは2007年3月から2008年1月まで事業場外みなし労働制の適用を理由に残業代を支払わなかったものです。

携帯電話が普及した昨今では、「みなし労働」という考え方自体が出来にくくなってきています。 

東急バスで実際に起こった事件です。

会社が組合員13名に対して、他の乗務員と差別して残業の割当てを支給したことなどが不当労働行為であるとして救済申立てがありました。

この事件の再審査について、中央労働委員会は1月28日、組合員9名に対する残業割当てが差別的であり、不利益取扱い及び支配介入の不当労働行為に該当するとし、会社に対し将来にわたる残業差別の禁止を命じるとともに、過去の残業差別による不利益を救済するため、組合員8名に対するバックペイを命じました。

自宅作業も業務と労災認定と認められた判例です。
2000年11月に心臓疾患で死亡した日本マクドナルドの男性社員の遺族が、労災と認めなかった処分は不当として国に取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁は今月18日、「発症は業務が原因」として、請求通り処分を取り消しました。

渡辺弘裁判長は判決理由で、男性の時間外労働が、発症前の1カ月間で少なくとも約79時間あったとしたほか、自宅でのパソコン作業なども業務に当たると判断、「強い業務の負荷に長期間さらされ、疲労の蓄積や過労が心臓の異常を引き起こした可能性が極めて高い」と指摘しました。

判決によると、男性は大学卒業後の1999年4月に入社し、2000年11月、川崎市内の店舗に出勤した直後に倒れ、病院に運ばれたが急性心機能不全で死亡しました。

遺族は川崎南労働基準監督署などに労災を申請したが「業務起因性が明らかではない」と退けられていた模様です。

労災認定の要因は業務起因性業務遂行性が見られます。「業務上」「業務によるものである」というはっきりとした根拠が労災認定の鍵になります。

日本通運社員側が逆転敗訴となる裁判が行われました。 関連会社から親会社に移籍する際、口頭で従来の賃金を保障すると約束したのに減額されたとして社員ら4人が日本通運(東京)に差額の支払いを求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高等裁判所は16日、日本通運に計約2,400万円の支払いを命じた一審大阪地裁判決を取り消し、社員側の請求を棄却しました。

判決理由で岩田好二裁判長は「賃金のように最重要の労働条件について実際と異なる説明をした場合、入社後の労使関係に重大な悪影響を及ぼすおそれもあるから、細心の注意を払ったと推測される」と指摘しました。「同額保障を約束したとは認められない」と結論づけました。

判決によると、4人は大阪府内の日通関連会社で宅配便の集配業務に従事していました。組織改編により2000年4月に日本通運に移籍した模様です。

旧グッドウィルグループの派遣大手ラディアホールディングスの子会社「テクノプロ・エンジニアリング」(東京)を解雇された神奈川県横須賀市の男性が、同社に賃金支払いなどを求めた仮処分申請で、横浜地裁は7日、解雇は無効として、賃金分として月約30万円の支払いを命じる決定をしました。

ラディアは業績が悪化し、今年4月にグループ全体で正社員4,500人を解雇した模様。地裁は決定理由で「解雇を避ける努力を尽くしたとは認められず、人員削減の必要性がどの程度あったかも明らかでない」と指摘しました。

決定によると、男性は1996年から同社社員としてメーカー工場に派遣されて働き、今年4月末に解雇されました。

同社は決定についてコメントしていない模様です。今後の動向を見守りたいと思います。

公務員もリコール請求可能?

高知県東洋町議のリコール(解職請求)をめぐり、公務員の農業委員が請求代表者として集めた署名の有効性が争われた訴訟の上告審判決で、最高裁判所大法廷は18日、判例を55年ぶりに変更し「公務員が請求代表者になることを禁じた地方自治法施行令の規定は無効」との判断を示しました。

 

その上で「農業委員が代表者の1人として集めた署名は無効」とした高知地裁判決を破棄、有効と訴えていた原告住民の請求通り、町選管決定を取り消しました。

 

竹崎裁判長は、地方自治法上の解職手続きは「請求時」と「投票時」の2段階に分かれ、公務員が代表者になれないとの資格制限は投票段階に関する規定だと指摘しました。請求段階にまで適用した施行令は無効と判断しました。

 

一方で「請求段階でも資格制限するなら、法律に基づき明確に規定することが望ましい」とも言及し、資格制限の是非自体は判断しなかった模様です。

 

判決は15人の裁判官のうち12人の多数意見で、政令を違法で無効とする最高裁判決は5件目となっています。

1954年の最高裁判決や行政実務は、施行令に基づき公務員が代表者になれないとしてきました。18日の判決によって、ほとんどの公務員が議員解職の請求代表者になれることになりましたが、反対意見で竹内行夫裁判官は「公務員が中立義務に反して地位を利用し、解職請求の主導者となれないとするのが合理的な解釈だ」と述べました。

判決によると、住民有志は町議のリコール運動を展開、昨年4月に1,124人分の署名を町選管に提出したが、選管は請求代表者6人のうち農業委員1人が含まれているとして、署名を無効と判断し、住民側は異議を申し立てましたが、棄却した経緯がありました。

今回のようなリコール手続きなどの訴訟で地裁判決に不服があれば、最高裁に上告する規定となっています。

管理監督者と認められない場合

  • 日本マクドナルド事件

店長はアルバイト従業員の採用、人事考課、アシスタントマネージャーの一次評価、時間外協定の当事者資格、店舗従業員の勤務シフトの決定、次年度損益計画の作成、販売促進活動の実施、一定額までの支出決裁権等の権限は有するが、営業時間の設定、独自メニューの開発、仕入先の選定、価格設定等の権限は有せず、店長会議等への参加はするが、経営方針等の決定に店長が関与するというものではなく、シフトマネージャーが不足する場合は、結局店長が出勤せざるをえないことから、勤務時間に関する自由裁量があったとは認めれらず、処遇についても下位のファーストアシスタントマネージャーとの明らかな差は無く、労働時間の適用が排除される管理監督者に対する待遇として十分とは言いがたく、結局、労務管理に関して、経営者と一体的な立場にある管理監督者とはいい難い。(H20.1.28 東京地裁) 

  • 岡部製作所事件

プラスティック成形加工会社に25年勤務し、営業開発部長として会社の主たる顧客であるA社の開発部門と協力して製品開発業務を行い、管理職手当として11万円の定額支給を受けているが、会社への経営参画状況は極めて限定的であり、常時部下がいて当該部下の人事権なり管理権を掌握しているわけでもなく、原告の職務は社内で養ってきた知識、経験及び人脈等を動員して一人でやりくりする専門的な色彩の強い業務であること、勤務時間も一般の従業員に近く、自由に決定できるものではないことから、管理監督者に該当しない。(H18.5.26 東京地裁判決) 

管理監督者と認められる場合

  •  日本ファースト証券事件

支店長は、30名以上の部下を統括する地位にあり、会社全体から見ても、事業経営上重要な職責にあったこと、大阪支社の経営方針を定め、部下を管理指導する権限を有しており、中途採用者については実質的に採否を決する権限が与えられていたこと、人事考査を行い、係長以上の人事について破原告の最良で決することができ、社員の降格や昇格についても相当な影響力を有していたこと等から、管理監督者に該当する。(H20.2.8大阪地裁判決)

  • 姪浜タクシー事件

タクシー会社の営業部次長は、終業点呼や出庫点呼を通じて多数の乗務員を直接に指導・監督する立場にあったこと、乗務員の募集について面接に携わり採否に重要な役割を果たしていること、出退勤時間は多忙な為、自由になる時間が少なかったと認められるものの、連絡だけで直帰できるなど特段の制限を受けていたとは認められないこと、700万円の高額な報酬を得ており、従業員中最高額であること経営協議会のメンバーであったこと等を考慮すると、管理監督者に該当する。  (H19.4.26 福岡地裁判決)

厚生労働省が集計した「平成19年度個別労働紛争解決制度施行状況」によると、全国の総合労働相談件数は約100万件(前年度比5.4%増)。

民事上の個別労働紛争相談件数が19万7904件(前年度比5.6%増)、この中から労働局長による助言・指導申出受付件数は6652件(前年度比15.5%)、紛争調整委員会によるあっせん申請受理件数は、7146件(前年度比3.2%)となり、制度発足以降依然として増加傾向を示しています。今回は、均等法違反による事例をご紹介します。

会社から「営業成績が悪い」として解雇されたが、会社の解雇回避の努力もなく、雇用契約期間の途中に解雇されたことに納得できないとして、解雇の撤回または、精神的苦痛および経済的損害に対する保証を求めて、あっせんの申請がありました。

お互いが早期解決を望んだ結果、解決金を支払うことで双方が合意しました。

ちゃんと順序を踏まえて解雇の手続きを進めたら、解決金を支払うことなく、解雇予告手当の支払い等で解決がはかれる事例です。

入社して間もなく、先輩や上司によりいじめや差別を受けるようになり、数日後、事業主より解雇通知を受けた事例です。本人は納得がいかず、希望は復職したいが精神的苦痛および経済的苦痛に対する保証金を求めたいとあっせん申請。

事業主はいじめや差別を否定し、勤務状況等から就業に適さないと判断し解雇したものであり、復職および補償金の支払には応じられないと主張しました。

あっせん委員により、いじめについては見解の相違があるが、解雇理由としては疑問が残ることから、解決金を支払うことにより和解したらどうかと事業主に譲歩を促したところ受け入れて和解しました。

■事例1

突然、会社から1ヶ月の勤務時間数が削減される勤務シフトを掲示され、それに納得できないといいうことで、労働条件変更の撤回を求め、労働局長の助言・指導を求められました。

□結果1

労働局長の助言・指導を踏まえ、申出人と会社で話し合った結果、従来の勤務シフトで働くことが出来るようになりました。労働契約で定められた労働条件を使用者が一方的に変更することはできません。

■事例2

上司から職種変更を告げられ、それが嫌なら退職届を出すよう勧奨を受けたが、あくまで現在の職種で雇入れられており、今まで、他の職種に配置転換した同僚を見たことがなく、配置転換に納得できないとして、現在の職種を希望して労働局長の助言・指導を申し出たものです。

□結果2

労働局長の助言・指導を踏まえ、申出人と会社とで話し合った結果、配置転換は行われず、これまでの職種で勤務することとなりました。

就業規則に、業務上の都合による配置転換の規定がなく、雇入れ時に他の職種への配置転換について提示されておらず、また、過去にこのような配置転換が行われていた例がないことから、労働者の同意なしに配置転換を命ずることが出来ませんでした。

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