委任販売員に労働基準法に基づく賃金を支給していないとして、八王子労働基準監督署は31日、申告者3人の未払い賃金を払うよう是正勧告を出しました。
家庭用ミシン大手の蛇の目ミシン工業は、「委任販売員は個人事業主で労働者ではなく、雇用関係もない」と主張していましたが、監督署は労働者と認め、同社に全社的な調査を促しました。
蛇の目ミシン同様、委託販売の形態は全国に多数あります。
申告していたのは、セールス業務を担当する同社の委任販売員で、給与は完全歩合制、雇用保険や社会保険は適用されず、有給休暇や残業代も認められないものでした。
平均月収は10万円程度で、ガソリン代など業務に要する経費を除くと手元には5万円程度しか残らない現状です。
会社側は指揮命令を否定していますが、委託販売員は「社員と同じ働き方をしており、実態は労働者だ」と主張してます。
原告側の委託販売員は、08年3月賃金未払いなどについて同監督署に申告しましたが、「労働者性を確認できない」として指導を見送られたため、ユニオンを結成し、10年2月に2回目の申告をしたものです。
監督署は原告側が記録していた労働時間を基に、最低賃金相当の保証給や有給休暇分の給与を支払うよう勧告し、併せて全委任販売員の実態調査をするよう指導しました。
蛇の目ミシン工業は「勧告の内容を検討し、対応を決めたい」と話しているとのことです。
委託販売員が「労働者」として認められる判例ができると、今後の企業負担は相当なものとなることが予想されます。