厚生労働省は、年金保険料の悪質な滞納者について11月にも国税庁に強制徴収を委任する方針を固めました。
滞納期間が2年以上、滞納額が1億円以上の事業所と年間所得1千万円以上の人で、いずれも「財産隠し」の恐れがある場合が対象となります。年金保険料の徴収に国税庁が乗り出すのは初めてです。
年金保険料の納付率は減少傾向で、厚労省と国税庁が連携することで徴収の際の強制力を高める狙いがあります。
2009年度の納付率が60%にとどまる国民年金の場合、所得がある家族も強制徴収の対象となります。
日本年金機構が滞納期間や滞納額から悪質な滞納者をリストアップし、財産名義を書き換えているなど財産を隠している恐れがあったり、督促しても納付計画を示すなど納付意思が見られなかったりする事例を対象に決定ものです。
厚労相が財務相を通じて国税庁長官に徴収を委任し、必要に応じて財産差し押さえなどの処分に着手するとみられています。
11月に実施される初回の強制徴収は、最大で十数件程度と見込まれ、その後も毎月、国税庁に強制徴収を委任していく考えです。
民主党は09年衆院選のマニフェストで、保険料と税を一体的に徴収する「歳入庁」構想を打ち出しており、今回の徴収委任はその流れに沿ったものだと考えられます。
細川律夫厚労相は19日の記者会見で、「納付率が悪いのは年金制度にとってゆゆしき問題だ」と指摘、徴収委任による納付率の向上に期待感を示した模様です。