動き出した制度
仕事内容が同じなら非正規雇用と正社員の賃金に差をつけない「同一労働同一賃金」の議論が本格化してきました。
雇用形態に関係なく、働きに見合った賃金が得られるようにするもので、多様な人材の活躍を促す上で、重要な課題となっています。
これは、安倍首相が1月の施政方針演説で実現に意欲を示したものです。
政府は、5月にまとめる「ニッポン1億総活躍プラン」に法改正を含めた具体策を盛り込み、来年の通常国会への関連法案提出を目指すようです。
現在、労働者に占める非正規雇用の割合は4割に上ります。
一般に、低賃金で雇用が安定せず、昇進・昇給の機会もほとんどないのが現状です。
男性では正社員に比べて既婚率が著しく低く、女性は出生率が低いのが目立ち、消費停滞の大きな要因とされています。
ただ、同一労働同一賃金は、日本の雇用慣行と相いれない部分も多く、制度設計は容易ではありません。
欧州では、仕事の内容に応じた「職務給」が設定され、同一賃金が定着しています。
一方、日本の正社員では、経験や仕事をこなす能力に着目した「職能給」が一般的となっており、終身雇用を前提とした年功賃金の枠組みで働き、職務の範囲が明確でない場合が多くなっております。
職務を限定して採用され、時間給を基本とする非正規労働者と、正社員の違いをどう評価して、何を基準に「同一労働」と判断するか、この点が今後、制度設計に当たって最も難しいものとなりそうです。
どのような場合であれば、賃金格差が許容されるのか、政府は具体的事例を示したガイドラインの策定を示してもらいたいところです。